Zwifterの雑感

Zwifterが海外情報中心に集めたZwift知識と適当な考察を残します。メジャーな情報は他所にまかせてニッチにマニアックに

400w横並び説をぶっつぶす

Zwiftの体重と速度の法則として、こんな説があるのご存知でしょうか?

「基本的に速度はPWRに比例して上がっていくが、400wが近づくにつれPWRは関係なくどの体重でも、登り・平坦・下り関係なく同じ速度になる」

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グラフで言うとこんなイメージですね

ワットを上げる(グラフが右に行く)につれ、体重間のタイム差がゼロになっていきます。
これを便宜上この記事では「400w横並び説」と呼びます。

 

ぶっちゃけ、それなりにZwiftやってる人でこれを信じてる人ってあんまりいないと思います。
確かに、速度域が上がるにつれ絶対パワーが重要となってくるのでPWRの影響は減りますが、ここまでではないというのが定説ではないかと。
「んなわけねーだろ!」の一言で終わる話ですが、一回この説が本当かどうか真面目に考えてみたいと思います。

 

 

ええ、今更感がとんでもないですがハッキリさせたくて…
実際私もZwift初心者のころ、この400w横並び説を信じてたせいで色んな所で混乱した覚えがあったので*1一応ちゃんと否定する記事をネットの海に残しておきたいなと。

「んなわけねーだろ」派の人は以下読む必要ないと思います。

 

データで検証

 

とりあえずデータを見てみましょう。
以下Zwift Insiderによるド平坦コースのTempus Fugitのスピードテストです。*2


残念ながら400w横並び説と同条件のデータはありませんでしたが、二つのデータを並べると否定できます。

まず、これがステップ1

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375w/75kgの5倍のタイムが47:36、400w/100kgの4倍のタイムが48:49
75kg5倍のタイムが400wに達していないにもかかわらず、大分速くなっています。約50分のTTでの1分差はめちゃめちゃ大きいです。
400w横並び説が正しいなら、375w/75kgは400w/100kgより少し遅くなっていないとおかしい。

ただし、フレームが前者はZwift Carbonで後者はZwift Aeroとなっており単純比較できません。

そこでステップ2として、この二つの機材の性能を調べます。

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同条件でZwift CarbonがZwift Aeroに比べ9秒遅いです。Zwift Carbonの方が性能が低いという事になります。


つまり、ステップ1を振り返ると
375w/75kgで5倍の場合
・400wに達していない
・機材が劣っている

という二つのハンデを背負っているにも関わらず400w/100kgに圧勝してます。
この結果は400wに近づくにつれ、どの体重でも速度が同じになるという説から明らかに異なっています。
これは平坦で400w近いパワーであったとしてもPWRが速度計算に使われたとみるのが自然ではないでしょうか

感覚的にもこっちが正しそうじゃないすか?

 

なぜ400w説は生まれたか?

 

データこねくり回してドヤ顔しといてアレですが、実は400w説も裏付けるデータがあります。

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確かに同じZwift InsiderのスピードテストのOld Richmondという2015年に行われたテストで400w時のタイムが体重に関わらず、全セグメントで全く同じとなっています。

 

二つのデータから、矛盾する結論が導き出されています。
この場合、どちらかあるいは両方のデータが正しくない可能性を疑うべきでしょう。

 

仮説1・Zwift InsiderがOld Richmondで計測ミスした


正直これな気がするんですがー
単純に体重の変更できてないんじゃないかという仮説。

セグメントを見るに、登り・平坦・下り問わず、どの体重でも400wなら同じタイムですが、そんなことありえます?
例えば23rd Street KOMの短い急斜面もPWR関係なしの絶対パワー勝負なのでしょうか?


30~40秒くらいの坂なので、例えばFTP4倍が上限のBカテレースでも400wは実戦的によく出るレベルです。
仮に横並び説が正しければ、50kgの人がL7の8倍でがんばる一方100kgの人は4倍のL4で追いつける計算になります。そうなのであれば、KOM前後は重量級のアタックポイントとなるはずです。かなり体感と外れます。

 

というかこのOld Richmondのシートよく見ると結果がぐっちゃぐちゃなんですよね
同条件で機材を良くしているのにタイムが落ちたりとかしてます
例)Zwift Aero/Zipp 808(29:12)→Tron(29:30)

このデータから何か法則を導き出そうというのはちょっと危険な臭いがします。

 


ちなみに、元データのStrava見に行くと、テストした人がなんでこんな結果になったかよくわからんといってます。

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仮説2・アルゴリズムが変わった


まあ昔は400wで制限があったけど、今は違うんだよと
調査が2015年とかなので、今とは事情が違うという事もあるんじゃないでしょうか。当時私Zwiftしてないんで知らんけど。

 

まとめ

 

無論、特に平坦の場合速度が上がるにつれ、空気抵抗の割合が増えるので、PWRより絶対パワーが重要になっていくという事はもちろんあります。

でも400wで全体重・全シチュエーションで同一になるというのは少なくとも今のアルゴリズムにそっているとは私は思わないです。
より新しくて、整合性のとれた(ように見える)データがある以上、違うんじゃないすかね。


テストをしたZwift Insiderも体重と速度の関係について別に記事を出してますが、このデータは無視されています。


結論、400w以上はPWR関係ない説は、今のZwiftにはどう考えても当てはまらないと思います。違ったらごめん。

*1:後、誰かにドヤ顔でこれの説明した記憶がある。ごめん。

*2:

Zwift Speed Tests - Google スプレッドシート